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第34回 右室機能は後負荷の影響を受けまくる(獣医麻酔集中治療)

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2020.05.05

第34回 右室機能は後負荷の影響を受けまくる(獣医麻酔集中治療)

循環管理はバランスが命。

   

臨床的に血圧管理するときには、輸液、ドパミン、ドブタミン、ノルアドレナリンが主に使用されていると思います。

 

ノルアドレナリンは一般的には後負荷が高いですが、健常犬を用いた研究では、主にβ作用でα作用は弱いイメージでした。

 

ただ、状況によってはαが強い=血管収縮が強い場合もあると思うので、さらなる研究が必要ですね。

   

麻酔管理やICUにおける循環管理では、左室から大動脈側のコントロールをして血圧管理することが主な仕事ではあります。

 

ここまでの循環管理を考えるようになったら、初級は卒業です。

 

この動脈側の管理に静脈血管側の機能を考えるようになったら中級レベルですね。

そして、

静脈側の特に右室機能まで考慮する循環管理ができるようになったら上級レベルかなと考えています

が、この右室は私にとっては非常に厄介な存在です。

   

何回目かは忘れてしまいましたが、右室について少しだけ話したと思います。

       

ようは、右室心筋が左室と比べて薄いのと、コンプライアンスが高いことで、容量負荷に対して容易に拡大する。

急性の後負荷増大(血管収縮)によって右室の一回拍出量は顕著に影響を受けます。

          Am J Respir Crit Care Med 150: 833-852,1994より引用改変  

肺血管抵抗に影響する薬剤を投与すると右室側の拍出は低下し、右房圧、中心静脈圧の上昇をきたし、静脈還流量低下から最終的には心拍出量低下にまで及ぶことがあります。うっ血徴候となりますが、左室側の前方拍出量が低下しているので、体としては有効循環血液量低下と判断し、心拍数の増加などを引き起こします。

   

流れとしては、

 

右室後負荷増加

 

 

右房圧、中心静脈圧上昇

 

 

静脈還流量低下

 

 

心拍出量低下

 

 

有効循環血液量低下

 

 

心拍数増加

     

などです。

   

では、肺血管抵抗に影響を及ぼす薬剤は何があるかというと、ほとんどのカテコラミンが肺動脈圧上昇に寄与しています。

       

肺血管抵抗(PVR)=平均肺動脈圧-平均左房圧/心拍出量

         

なので、カテコラミンの使用は肺血管抵抗を高める可能性は高いですね。

   

ただ、下の図をご覧ください。

 

また、ガイトンの静脈還流曲線です。

 

ちょっとわかりにくいかもしれませんが、右房圧を下げるには心拍出量を上げるしかないんですよね。

 

じゃあ、心拍出量上げるには?カテコラミン使うしかないような?でも肺動脈圧が・・・

 

なんとなく管理が難しいのがご理解いただけましたか?(^-^;

 

逆に、心拍出量が低下していくと右房圧も上昇していきます。

 

したがって、心不全の超音波検査で右房圧(中心静脈圧)を推定することの意義は大きいですね。

 

こういったディスカッションを今後していきたいと思っています!

     

ちなみに、正常な状態がAです。心不全が進行するとGに移行します。右房圧上昇してますね?

 

このままだと、ダメなので交感神経活性、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系、バソプレシンが代償として働くと体液量が増加していきます。

 

そうなると、静脈還流曲線が上方変移してHに移行します。こうすることで右房圧は上がってしまいますが、心拍出量を代償します。

 

つまり、心不全の進行とともに右房圧を上昇を伴いながら心拍出量を維持させているわけですね。

 

したがって、心不全の血行動態を理解するうえでも中心静脈圧の測定の意義は大きいです。

     

生理学を理解することは大切ですが、生理学はすべての臓器や器官を統一した概念では見ていないです。

 

つまり個々の単一臓器として理解は面白いですが、これをどう臨床に応用するかがポイントです。

   

それじゃ、また!

 

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