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第71回 麻酔集中治療医が考える膵炎⑥

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2020.07.23

第71回 麻酔集中治療医が考える膵炎⑥

【輸液製剤がグリコカリックスおよび微小循環に及ぼす影響】

 

急性膵炎の治療に関してコンセンサスが得られているものは輸液であり、治療の中心的役割を果たすと考えられている。

もちろん臓器に血液を供給することが大切なので、輸液だけで血行動態が保てなければ昇圧薬を使うこともある。

 

循環血液量が減少しているので、まずは細胞外液として生理食塩水やリンゲルなどを使用する。

どの輸液製剤が正しいのかは不明だが、急性膵炎で生理食塩水とリンゲル液を比較した研究では、リンゲル液を使った群で、生理食塩水を使った群よりも24時間後のSIRS発生率が低下することが示されている(84%低下vs 0%低下, p=0.035)。

この論文の主要評価項目はSIRS発生率で決して生存率が高くなるということではないが、医療におけるガイドラインでは急性膵炎の初期輸液にリンゲル液を推奨している。

 

急性膵炎の初期治療において積極的に輸液治療が重要であることは周知のとおりであるが、投与速度に関しては一定の見解はないと思われる。

 

ここまで敢えて輸液治療に関して述べたが、その理由は、この輸液療法における輸液製剤および輸液投与速度がグリコカリックスおよび微小循環に多大な影響を与えることがあるためである。

   

〇輸液製剤による違い

 

急性膵炎含めた炎症性疾患の治療では消化管血流の維持が困難な症例が多くいるが、これを改善するために、ボルベンと乳酸リンゲルが急性出血豚モデルで消化管粘膜がどのような影響を受けるかについて考察された論文がある。この研究では、ボルベン群の豚の小腸粘膜保護効果が高いことが示唆されている。しかし循環動態に関しては両群で差はない。

これらはHES130/0.4の投与で微小循環が改善し、腸組織酸素化を改善し、虚血再灌流を防ぎ、消化管障害を妨げると考察されている。また、その他の研究では輸液蘇生が微小循環に与える影響を検討した報告もある。これは生理食塩水・ゼラチン・ボルベン・高張食塩水で比較検討されており、生理食塩水以外で微小循環を改善できることを示している。

しかしこれらは膵炎を対象とした研究ではないため鵜呑みにすることはできない。しかし、微小循環を改善させる手段としては有用である可能性がある。

 

また、HESに関しては賛否両論あり、現在は懐疑的なことも多いが、重症急性膵炎に対するHES (130/0.4) の効果を検証したRCTでは、乳酸リンゲルに比べてHESを使った群で、膵炎発症から数日間の腹腔内圧亢進(膀胱内圧≧12 mmHgと定義している)や人工呼吸器を要する呼吸不全を発症する傾向が低い結果となっている。

 

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