2020.07.23

第72回 麻酔集中治療医が考える膵炎⑧

〇輸液投与速度がグリコカリックスに及ぼす影響

 

近年は輸液最適化を目指した輸液戦略のため様々なプロトコールが提示されており、医療では目標指向型輸液管理が重要視されている。これは大量輸液による合併症が数多く報告されたことによるが、輸液のボーラス投与もグリコカリックスの脱落を引き起こすことが知られている。犬を用いたSmartらの出血性ショックにおける研究では、大量晶質液投与がグリコカリックスを脱落させ、炎症を増幅することを示している。また、晶質液を30分間でボーラスしたときの血管内皮グリコカリックスは傷害を受けることが報告されている。

 

 

 

 

<ここでのポイント>

 

・投与する輸液はリンゲル液で良いと思われる

 

・HESや高張食塩水でも微小循環を改善させる可能性がある

 

・HESは膵炎に有効な可能性もあるが、合併症や予後悪化が敗血症患者で報告されているため、使用には注意を要する

 

・過剰輸液ならびに輸液ボーラスがグリコカリックスを傷害する

 

・急性膵炎の治療は輸液による臓器血流の増加もしくは維持が大切であるが、輸液量や投与速度によっては微小循環やグリコカリックスを傷害し、病態を悪化させる可能性がある