2020.04.22

  • 人工呼吸
  • 呼吸器

第9回 血液ガスで挿管するかどうかは決まらない(獣医集中治療)

先日、いただいたご質問の中に興味深いものがありました。

 

「気管挿管のタイミングと使用される薬剤について」

 

血液ガスが重要であることに意義はないですし、無理なく見れるなら見たほうが良いと思ってはいます。

 

 

 

おそらく呼吸の仕組みを考えると分かりやすいかなと思います。

 

図1 呼吸仕事量

 

 

 

 

呼吸するときは、呼吸中枢から脊髄や末梢神経を介して、呼吸筋や胸壁、気道、肺と多くの中継点を介して呼吸しています。

 

 

「呼吸中枢→脊髄→神経→呼吸筋→胸壁→気道→肺」

 

 

の経路のどこかに異常があると問題が生じるわけですね。

 

 

呼吸中枢なら、オピオイド過剰など

 

脊髄なら頸部椎間板ヘルニアなど

 

呼吸筋なら重症筋無力症とか

 

胸壁なら外傷などによる様々な合併症

 

気道もいろんな疾患ありますね

 

肺はもちろんもっとたくさんありますね

 

 

図1に示したのは呼吸仕事量で、結局、この仕事量を規定しているのは「肺のコンプライアンス」と「気道抵抗」ですね。

 

 

図2

 

 

図2のような状態になると(大体はどっちかが問題になるか両方)

 

例えば横隔膜や外肋間筋などの呼吸筋ががんばって維持する、もしくは頑張りすぎることで増えた呼吸仕事量をカバーしているわけですね。つまり呼吸筋が努力できているうちは肺へ空気を送れるわけですね。

 

もし仮に呼吸仕事量が増大していなくても呼吸筋に異常があれば肺に空気は入らなくなっちゃいますね。

 

 

ようは、大切なのは呼吸筋力と呼吸仕事量のバランスということですね!

 

つらいながらもこのバランスを維持すべく呼吸筋が頑張っている間は・・・

 

 

血液ガスの結果に異常はほとんどでない

 

 

のはご理解いただけると思います。

 

では、この二つのファクターにどの程度の余力があるかがわかれば、挿管のタイミングがわかる!ということですね。

それは何か・・・

 

「見た目」

 

です。

 

血液ガスよりも五感を磨いたほうがよいのかなと思います。特に犬猫の血液ガス検査は呼吸状態悪ければかなり負担になりますからね。そちらのバランスも大切ということですね。