2020.04.23
第10回 SIMVのモード再考してみた!(獣医麻酔集中治療)
SIMV:同期式間欠的強制換気とA/Cアシストコントロール(PCV, VCV)よりも良いモードと獣医療のセミナーではよく聞くが、これは本当か?判断はお任せしますが、ここでSIMVとA/Cの違いをきちんと理解しちゃいましょう。
まず大前提として、自発呼吸がない状態であれば
「どっちを使っても性能は同じである」
ということだ。以前、これはSIMVだから自発呼吸が出ても気づかないモードと説明していることを聞いたことがあったが、このような誤解はしないようにしていただきたい。
以前はIPPVとかIMV(間欠的強制換気)と表現されることが多かったでしょうか。獣医療で販売されている人工呼吸器はこのタイプ多いかもしれませんが。自発呼吸あろうがなかろうが一定時間毎に強制換気が入るモードですね。したがって、動物に自発呼吸がある場合は当然ですが、ぶつかります。いわゆるバッキングです。私は自分で人工呼吸器を咥えて様々なモードを試したことがあるのですが、自分の呼吸したいタイミングで呼吸できないのはとても辛いものです。
そこで患者の自発呼吸にうまく同調してあげようと開発されたのがSIMVです。名前の通りですが、動物の呼吸にシンクロ(同調)させて呼吸させるわけです。
「だからA/C、つまりPCVやVCVよりも優れている」
と思われています。また名前のインパクトが大きいので患者に優しい人工呼吸モードと考えられがちです。
もう一つの大前提として、SIMVも基本はPCVもしくはVCVを選択できます。
???
となりましたか?基本はPCVとVCVと原理は変わらないわけです。
では、その違いは?
①自発呼吸が8回/分の動物にA/CのPCVもしくはSIMVのPCVを設定呼吸数12回/分、換気量150mlで乗せるとしましょう。
まぁ、自発呼吸出てるけど、麻酔中気にせず人工呼吸するときもあると思いますので、それを想像していただきたいです。
A/CにしてもSIMVにしても自発呼吸があれば、その自発呼吸に合わせて補助呼吸が入ります。つまりどちらも自発呼吸にシンクロします。なので、どちらも補助呼吸を8回(自発呼吸分)、残り4回(12-8)の調節呼吸(完全な機械換気)をします。
つまり、
A/Cの場合、150ml×12回=1800ml
SIMVの場合、150ml×12回=1800ml
となり、A/CとSIMVに全く差はでません。
②自発呼吸が18回/分の動物にA/CのPCVもしくはSIMVのPCVを設定呼吸数12回/分、換気量150mlで乗せるとしましょう。
自発呼吸の回数が増えただけです。そうするとA/Cの場合は自発呼吸があればすべてにアシストしてしまうのが特徴なので自発呼吸の分だけ補助換気が入ります。
つまり、
A/Cの場合、150ml×18回=2700ml
となります。
では、SIMVではどうでしょうか?
SIMVの場合、150ml×12回=1800mlの換気量にプラスして、残り6回(18-12)分の自発呼吸を患者さんが自力でするということになります。したがって、患者さんの自発呼吸の換気量に依存してトータルの換気量は変化しますね。
少し違いが見えてきましたか??
人工呼吸設定の呼吸数よりも自発呼吸が多い少ないによって、A/CとSIMVには違いが生じるということですね!
ここまで聞いて理解していただければ、A/CのほうがSIMVよりもシンクロ率は高いと言えるのではないでしょうか?
おそらく麻酔管理中の人工呼吸であれば、両者の違いを明確に理解しなくても大きな問題は生じません。人工呼吸器が何とかしてくれます。
問題が生じやすいのは重症な肺疾患などにおける人工呼吸管理で、さらに自発呼吸を残して管理しているときにはこの理解がないと動物の呼吸苦に気づけないことが多いと思います。
動画配信では、ここから先の調整方法とグラフィック含めた人工呼吸設定に関して解説します。私が使っていた2社の人工呼吸器を実際に用いて操作方法トラブルシューティングを学んでいただきます。
麻酔中の人工呼吸器はこちら。
クロス・メディカルサービス株式会社様
ICUにおける人工呼吸器はこちら。
フクダ電子様
https://www.fukuda.co.jp/medical/products/ventilator/servo_air.html
お楽しみに!