2020.04.24
第12回 VCV従量式について学ぶ①(獣医集中治療)
なぜ鮫なのか・・・あとでわかります。
前回の復習ですが、
まずは、A/CのVCVから学びましょう。
VCV volume control ventilation: 従量式
一回換気量を一定にするモードで、肺が硬い、あるいは気道が狭いなどの病態では気道内圧が高いイメージがあると思います。
<設定できる項目>一回換気量・吸気流量・吸気時間
各種メーカーの人工呼吸器によって設定できる項目は若干違うが、一回換気量・吸気流量・吸気時間の3つを調整するものが多い。
Penlon Prima 400 series (クロス・メディカルサービス株式会社)では、一回換気量と吸気時間を設定する。これにより自動的に吸気流量が決定される。
その他の人工呼吸器では一回換気量と吸気流量を設定できて、これを決めると吸気時間が決定するものもあります。
これだと獣医療の場合、ちょっと大変だったりします。
つまり、人なら、
一回換気量500mlで吸気流量を40L/分(40000ml/分=667ml/秒)にした場合、吸気時間は500÷667=0.75秒
となりますが、例えば10kgの犬に10ml/kgにした場合、
一回換気量100mlで吸気時間を40L/分にした場合、吸気時間は100÷667=0.15秒
となり、めちゃくちゃ早い吸気時間となります。したがって、この場合、呼気時間があまりに長いので、適切な一回換気量であったとしても肺が虚脱する時間がありすぎて無駄なストレスが肺にかかる可能性があります。
そうなると吸気流量は10L/分でも0.6秒くらいとなり、設定が意外と大変です。なので、一回換気量と吸気時間を設定したら勝手に吸気流量を調整してくれる人工呼吸器のほうが楽ですね。ここは人とは異なる点だと思います。
ここでグラフィックを覚えちゃいましょう!
VCVのグラフィックはこれです!
覚えるのはこの基本画面で十分戦えます。つまり、『圧・流速・換気量』だけです。
特に気にしているのは圧と流速の波形です。
VCVの場合、流速波形を見ると、一回換気量分のガスを一定の流速で送っています。そうすると圧波形の圧が徐々に上がっていきます。そして、一回換気量分のガスを送気すると流量波形は急降下し、圧も急降下します。これが基本です。
ポーズ時間
吸気が終わるとすぐに呼気に移行するのがVCVの特徴だったりするのですが、吸気が終わっても即呼気に移るのではなく、一定の時間そのまま肺を広げた状態で維持することをポーズといっています。写真撮るときの「はいポーズ」・・・「はいチーズ?」と同じです。つまり止めるんです。ポーズすることで図のような効果を期待しています。
こうなると、面白いことに圧波形と流速波形は変化します。まぁ、当然ですね笑
図のプラトー相となっているところがポーズに相当する場所です。ポーズの間は流速はゼロなので最初の波形とは異なりますね。このゼロの部位の圧を見ると、なんと、圧がちょっと下がっているのがわかると思います。これがそれぞれ何を表すかを次の図に示します。
Ppeakとなっているのが、いわゆる皆さんがよくご存じの最高気道内圧です。
Pplatとなっているのが肺そのものの圧を反映するプラトー圧です。
とりあえずここだけ覚えましょう。
ん?となると、PpeakとPplatの差はなに??いつもPpeakを20hPaにするとダメとか肺が傷つくとかセミナーで習ったかもしれませんが、それは肺の圧ではないですよ??肺の圧はPplatです。
混乱しちゃいますね。次回は、なぜPpeakとPplatに違いが存在するのかを科学的に証明しようと思います。
それじゃ、また!
あ、ちなみに鮫は背びれがVCVの圧波形に似てます。
図はER・ICU診療を深める① 救急・集中治療医の頭の中Ver.2 小尾口邦彦著 より引用改変いたしました