2020.05.01
第28回 Stage CのMMVD麻酔③(獣医麻酔)
次に悩ましいのは、麻酔薬や鎮痛薬をうまく調節して麻酔管理していても、血圧下がってきちゃった・・・
こんなときですよね。
では、実際に心臓悪い症例にどのような循環作動薬を使用していくか、このブログではあくまでも教科書目線で解説します。
専門家でも楽しめる内容は動画やFacebook上で公開します。
また、カテコラミン?β受容体?あるふぁ?受容体など、実はよくわからない動物看護師さんや麻酔を勉強し始めた先生向けの動画も撮影しました。ほんの15分でカテコラミンんが理解できる内容です。近日中にアップ予定ですので、そちらもお楽しみに!
ドブタミン
非選択的β1受容体、β2受容体のいずれかに作用する
β1に作用したときは、心拍数と心収縮力の両方を増加
一般的な推奨投与速度は1~5㎍/kg/min
β2受容体も活性化するため、血管拡張作用もある
ドブタミン1~8㎍/kg/minでは血圧上昇に寄与しないとする報告もある
コメント:
心臓悪い=ドブタミンの傾向が獣医療域では高い。後負荷は完全な悪?まぁ、そんなこともないのですが、使い方難しいですよね。私は第一選択では使用しませんが、心配ならドブタミン5㎍/kg/minくらいから始めても良いと思います。ペピィセミナーやVES動画ではドブタミンの正しい使い方と問題点をお話ししますね。
ドパミン
ノルアドレナリンの前駆物質
1~3㎍/kg/minではD1受容体がメインで、おもに利尿
4~10㎍/kg/minではβ1がメインで、収縮力増加や心拍数増加を引き起こす
10㎍/kg/min以上では、α1受容体作動となり血管収縮などの後負荷増加をします
教科書上は、DCM, HCM, 逆流性弁疾患などの特定の心疾患を有する症例では禁忌となりうるとしている
コメント:正直、犬の場合、あまり心拍数に寄与するイメージはない。犬における推奨量は7㎍/kg/minであるが、血圧はあがるが、心拍も一定で安定するか、少し低下するイメージが強い。α1受容体メインとなる10㎍/kg/min以上では血管収縮作用が強くはなるが、15㎍/kg/minまでは容量依存的に心拍出量と血圧、尿量を増やす研究もある。ただこれは正常犬のデータ。私は心臓悪くてもドパミン7㎍/kg/minから開始している。疾患の中で注意が必要なのはDCMとHCM(特にLVOT)くらいで、ほかは全然気にしていない。
アドレナリン(エピネフリン)
α-β受容体作動薬
血管収縮作用はカテコラミンで最強
ただ、選択性はβのほうが強い。心拍数と収縮力増加を示す
心筋の酸素消費量を著しく増加させ、不整脈を誘発する
使うなら基本的にはCPRのときだけである
コメント:教科書に書かれていることとほとんど意見は同じだが、心原生肺水腫症例でCPAからROSCして心原生ショックだけでなく、血液分布異常性ショックを合併し、重度の低血圧症例になった症例に対してエピネフリンの持続点滴で血圧上昇させ、離脱できた症例も経験している。結局は使い方次第。
エフェドリン
ドパミンの単回投与バージョン
ボーラスによって血圧、心拍出量、酸素運搬量増加を示した研究がある
血圧上昇持続時間は心拍出量増加持続時間よりも短い
論文上の投与量は250㎍/kg iv
コメント:猫はとても使いやすく、私は25-50㎍/kgで使用する。犬は徐脈になったりあまり血圧上昇が想像通りにならないこともある。アトロピン準備しておくと気がラクになる。使用量は猫と同じ。
バソプレシン
ペプチドホルモンのADH
全身血管抵抗上昇させるが、心拍数や心収縮力には影響しないとされる
アドレナリン受容体には作用しない
後負荷作用がめちゃくちゃ強い
過度な使用では心不全を悪化、心拍出量低下と酸素運搬量低下を引き起こす
後負荷不適合となり得る(ブログ21-23回を参照)
フェニレフリン
単純なα作動薬
血管収縮作用は強い
β作用がないので、心不全症例ではちょっとしんどいです
1~2㎍/kg iv, CRIするなら1~2㎍/kg/minで投与
ノルアドレナリン
β受容体およびα受容体作動薬でメインは血管収縮作用のαと言われている
ドパミンよりも不整脈が起きにくく、ドパミンよりも強いイメージで使用しますが、どちらも同じような薬です
0.05-2㎍/kg/minで使用する
EVIDENCEの投稿にも血管収縮薬の使用方法を載せていますので、併せてご確認ください。
結局心臓悪い症例には⁉