2020.05.02
第29回 ドパミンとドブタミンを深堀してみた!(獣医麻酔集中治療)
MMVDの麻酔について解説していましたが、ここで心臓悪い=慣習的なドブタミンの歴史に終止符を打つためには、少しドブタミンとドパミンについてブログで書ける範囲で解説します。そのうちブログの完全バージョンを書籍化でもしようと思います。
私はこれら薬剤を使用するときは、動物の基礎背景や疾患、今現在の状態をもとに頭で、
PV loop
フランクスターリングの心機能曲線
ガイトンの静脈還流曲線
フォレスター分類
などをイメージしながら薬剤を使用していますが、これをブログで解説すると誰も読まなくなったら悲しいので、小出しにしていきます。
ドパミンとドブタミンの基本的な機序については第28回のブログを参照してください。
まず獣医療で有名な論文が
Rosati M, et al. 2007. Am J Vet Res 68(5):483-94.
「ドブタミンは容量依存的に心拍出量を増加させるが、血圧と尿量は増加させない」
「ドパミンはイソフルランによる低血圧がMAP70mmHgになるのに7㎍/kg/minが良かった。15㎍/kg/min程度までは血圧、尿量を増加させる」
といった論文だったのですが、
これだけで見ると、血圧を上昇させるだけなら絶対にドパミンですね。
ただ、これは正常犬です。
では、悪いことはあるか?実はあまり動物でドパミンを検討した報告は出てないですね。
では、医療ではどうでしょうか?
De Backer D et al, N Eng J Med 2010;362:779-89.
ショック患者さんではドパミンを使用するよりも、ノルアドレナリンを使用したほうが良い(生存率の観点から)
心原生ショックではドパミンよりもノルアドレナリンのほうが確実に血圧を上昇させる
というデータもあります。古くから心筋の酸素要求量を増加させるとか、腎保護効果があるとされていますが、まず腎保護効果は医療ではないというデータが揃っています。予防的な効果はないということです。
ただ、実臨床の中では、ドパミン使うと尿量増えてるからと言われてしまうこともあるのですが、それはそれなんですが、あくまでも保護効果がなさそうということですね。
過去のLINE配信でもお伝えしましたが、
Intensive Care Medicine
November 2019, Volume 45, Issue 11, pp 1503–1517
Vasopressor therapy in critically ill patients with shock
こういうのがあって、ドパミンは徐脈のときだけにしなという感じで、やはり酸素消費などは気にされているということですかね。
じゃあ、やっぱりドブタミン?
これも過去のLINEで話しましたが、
Goya S, et al. Vet Anaesth Analg. 2018.
では僧帽弁逆流を呈している犬に対するイソフルランの低血圧の主原因は心収縮力ということで、ドブタミンが推奨されています。
では、ドブタミンは本当に安全なのか?
残念ながら、獣医療でのデータは存在しません。というか出せない?のかもしれませんが、
O'Connor CM et al. Am Heart J. 1999;138:78-86
の中では、ドブタミン非投与群とドブタミン投与群を比較しており、ドブタミン投与したほうが、
心不全悪化
心停止
心筋梗塞発症率
が有意に高かったとされています。
考察では、ドブタミンの酸素消費量増加が原因ではないかとされています。
ミルリノンなどのでも同じようなデータが出たりしていますね。
さて、結局何が正しい昇圧の使い方なのか?
ブログではここまでにしておきます。