2020.05.02
第30回 強心薬が必要な病態を考察する!(獣医麻酔集中治療)
心臓が悪い症例にドブタミンは非常に使いやすいイメージであったが、
結論として、
予後悪化に関連
心筋自体に悪影響
が基礎実験レベルで証明されている
一方で、
ドブタミンがMR症例の血圧上昇させたり、明らかな臨床症状の改善を認めることも多い
つまり、
臨床症状は一時的に改善するが、結果として予後が良くないという悩ましい問題が生じる
心不全の管理や麻酔集中治療のポイントは、
心拍出量の維持
除水(うっ血の解除)
である
心拍出量を保持しないと、体が脱水と勘違いをし、さらなる水分貯留を引き起こすからである。いわゆるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の活性化である。
ここでまた出てくるのが、
心拍出量=心拍数×一回拍出量
一回拍出量=前負荷×心収縮力×(心拡張能)/後負荷
ですね。
つまり、
体が脱水と誤解しないようにするためには、
心収縮力の増強
心拡張能の改善
後負荷の低下
左室前負荷の増大
が必要となる。
心拡大が生じており、左室の拡大が生じているのであれば、心臓の前負荷はそれなりに維持されている(有効循環血漿量は低下しているかもしれないが、心臓内前負荷は大体維持されている症例がほとんである)ので、治療として使用するのは、
心収縮力増加
心拡張能の改善
後負荷低下
が有効となる。
ドブタミンは心収縮力増加が目的なので、基本的には一回拍出量を増加させます。
当たり前な答えになってしまったが、
使用するタイミングは、
低心拍出量の改善
である。
さらに
血圧=心拍出量×末梢血管抵抗
である。
心不全動物では末梢血管抵抗が増加していることが多い。
CRTや四肢末端の温度を五感を用いて評価すると末梢血管抵抗の増加を感覚的に理解することができる。
にもかかわらず、血圧が低い(収縮期血圧100mmHg以下)のであれば、心拍出量の著しい低下が推測できる。
これが強心薬、いわゆるドブタミンの出番であると考えている。
ドブタミンは筆者は3㎍/kg/min程度から開始するが、イソフルラン麻酔における低血圧管理にはこれよりもはるかに高用量のドブタミンを使用している。詳細は論文をご覧ください。とても参考になりますよ!
β遮断薬を併用しているときのドブタミンの使い方と、PDE3阻害薬に関しては、VESコミュニティーで解説いたします!