2020.04.25
第14回 VCV従量式について学ぶ③(獣医集中治療)
では、ここまで来たので、少し臨床例でVCVの感覚を学んでいきましょう!
猫6歳齢、大腿骨骨折整復のため、全身麻酔を実施
既往歴:気管支炎、一日数回咳をすることがある
ASA1
痛みの程度:重度
疼痛のため、静脈留置設置が困難であり、ケージ(オーナー様ご持参)から出すのが困難であったため、イソフルランボックス導入による鎮静処置を実施。十分な鎮静となったため、その後、メデトミジン5㎍/kgを静脈内投与(血管内に注射)した。
その後、ラリンジアルマスクを挿管し、イソフルラン1%とした。静脈留置設置し、その後挿管した。
挿管時イソフルランによる気道刺激が原因なのか、興奮なのか不明であったが、粘稠性の高い分泌物があり、口腔内を洗浄し、サクションを同時に行った。しかし、サクションでは何も吸引できなかった。
ブプレノルフィン0.02mg/kg ivし、その後、硬膜外麻酔を実施した。
人工呼吸を実施し、
麻酔安定後の気道内圧の流量波形を示す。
その15分後、突然気道内圧が上昇した。その時の気道内圧のグラフィックを示す。
VCVの場合は、一回換気量が常に一定量供給されているため、この状態は明らかな気道(ストロー)の閉塞が予想されたが、波形診断をするためにポーズ時間を設定した。その時のグラフィックを示す。
正常なときの気道内圧が9cmH2Oだったので、17-9=8cmH20分が気管の圧となり、正常の場合は5cmH2O以下なので、気道抵抗が高いことが波形診断できました。
導入時の粘稠性の高い分泌物から考えて、おそらく気道に詰まったと判断しました。サクションでは吸えなかったので、気管チューブを抜管し、再挿管して事なきを得ました。
このようにグラフィックを見るだけで、動物の気道と肺胞のどちらに問題があるかが一瞬で判断できてしまうのが、VCVで人工呼吸管理しているときのメリットですね。
ちなみに、PCV従圧式の場合、十分な吸気時間があれば、気道閉塞には気づきにくく、完全な気道閉塞にならないと検出できないこともあったりします。この話はまた後日ですね。
次回は、VCVのラスト回になります。
それじゃ、また!