2020.04.26
第16回 PEEPは心臓に優しいという事実(獣医麻酔集中治療)
PEEPにしてもCPAPにしても、基本的な概念は同じで、吸気も呼気もどちらも持続的に陽圧をかけておくことです。
肺がつぶれてしまう病態で使用されることが多いですね。SpO2が低いとか、呼吸が苦しい動物に使用することで劇的な改善が得られることがありますね。
ただ、人工呼吸でのPEEPとCPAPの弱点は陽圧換気なので、静脈還流量が低下し、血圧が落ちてしまうというときもあるわけです。
全身循環を考えれば、陽圧呼吸は悪者として考えられることもあります。
では、心臓に関してはどうでしょうか?
ポイントは2つあって、
①前負荷を減らす
②後負荷を減らす
です。
①前負荷を減らすメカニズム
そもそも前負荷は、心臓に血液が戻ってきて、心臓がどれだけ引き延ばされたか、つまり心筋が伸びたときに心筋にどれだけの負担がかかったかを表しますね。
心臓がパンパンとなり、肺水腫を起こしたりする動物は、この前負荷が多いために生じます。
さらにフランクスターリング心機能曲線での上限を超えてしまい、心臓がアップアップの状態というわけですね。
PEEPによって胸腔内圧が高くなるので、心臓に戻ってくる血液量は減少します。これによって前負荷が減りますので、ある程度の心不全状態を改善することが可能になります。
②後負荷を減らす
結局、左室から大動脈に血液を供給するためには、左室は大動脈の圧に打ち勝たないと全身に血液を供給することができないのである。これを文字で表現するの難しいんですよね・・・笑
要は呼吸努力が強い動物は強い陰圧呼吸となるので、左室の心筋はより高い負担がかかるのです。
つまり、大動脈圧に打ち勝つ圧と、胸腔内圧に打ち勝つ圧がともに必要となります。
例えば自発呼吸が強くて胸腔内圧が-20mmHgで、大動脈圧が120mmHgだとしたら、左室は120-(-20)=140mmHgの圧負荷が必要となります。
しかし、
PEEPを10mmHgかけてあげると、120-10=110となり、負荷がとれました。という計算です。
すなわち左室の後負荷は軽減させるということですね。
PEEPやCPAPが左室の収縮をサポートしているイメージです。
まさに心臓マッサージと同じ・・・だと思っています。
つまり、外側から無理やり圧かけて弱い心臓の拍出をフルサポート的な役割がPEEPやCPAPにはあります。