2020.04.21
第5回 アトロピンの作用機序と使い方のコツ⁉(獣医麻酔)
トロピンについて学びなおしたことを呟いていきますね。
とりあえず、基本的には心拍を上昇させる薬です。
教科書的なつまらないところ・・・
ムスカリン性アセチルコリン受容体に作用する
この受容体は、GTP結合タンパク質に共役した代謝型受容体(5つものサブタイプがある)
M1: 分泌細胞、脳、自律神経節
M2: 心筋
M3: 平滑筋や分泌細胞
M4-5: 脳
心筋のM2受容体にアセチルコリンが結合すると・・・
アセチルコリン感受性Kチャネルが開口し、アデニル酸シクラーゼが抑制されるので心筋細胞内のcAMP濃度が低下する。
ちなみにこのアセチルコリン感受性Kチャネルは心室筋にはないようですが、開口すると最終的に徐脈を引き起こします。
(実際には、心房の活動電位短縮、洞結節や房室結節の脱分極による)。
心配しないでください。私もここまで常に覚えて麻酔しているわけではありません・・・
心臓以外に作用すると、消化管運動亢進、気管支平滑筋収縮、縮瞳、眼圧低下、膀胱収縮などを生じます。
これら作用を遮断するのが、アトロピン
というわけですね。ムスカリン性アセチルコリン受容体の阻害なので、副交感神経を遮断します。
すごく簡単な言葉に変えると、落ち着いた状態から興奮状態にする薬です(人格的なことではない)。
基本的な使い方
獣医療で使用されるのはほとんどが心拍低下に伴うアトロピンの使用であると思われる。
心臓への作用は、
洞房結節への刺激が増大し、心拍数が増加します
これは副交感神経亢進状態が高いほど効果が出やすい特徴を持ちますが、みなさんご存じのように個体差が強く、投与量によっては効果がなかったり、ものすごく心拍数が上昇したりします。
心臓以外では、眼圧を上昇させたり、唾液分泌の抑制、消化管運動抑制(おなか痛いときにブスコパン使われたことあります)、膀胱緊張低下(術後の排尿障害)などには注意が必要です。緑内障の麻酔ではアトロピンは使いたくないと言われることもあります。そりゃ当然ですね。あとは麻痺性イレウスの動物にも避けたほうがよいこともあります。
そのほかにもいろいろな禁忌はありますが、心拍が低下して重度の徐脈や低血圧などがあれば、投与せざるを得ないことも多々あります。
犬猫では0.005mg/kg~0.05 mg/kg で使用されます。
私は基本的にIVで使用し、徐脈に伴う低血圧が生じた場合にo.o1mg/kgで使用しています。
たまに房室ブロックが先行するときはありますが、作用機序を考えれば当然です。このときは追加するかどうか悩みますね。
その時はP波の数を数えましょう。そのP波にQRSがついてきたときの心拍が100 bpmを超えるなら、追加のアトロピンは待ったほうがいでしょう。
待つのが怖い・・・そんな時はとっておきの方法があります・・・がここではお知らせしません。
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