2020.04.27

第19回 心拍出量が低下すると?(獣医麻酔集中治療)

麻酔やICUでは、血圧だの、心拍出量だの、臓器血流だの、結局何が一番大切か悩ましいのですが、

 

私が思うに、循環血液量を推定することは何よりも難しいのです。

 

 

 

まず、脱水すれば、心拍数は上昇しますね。これは失った体液量を心拍によって代償し、何とかして血圧を維持しているわけですね。

 

 

では、心不全の動物を想像してください。よく肺水腫やら、呼吸困難やら、咳やら様々な問題を生じますが、これらの動物は体液量過剰ですよね。だって肺水腫になるくらいですからね。

 

 

 

でも身体には様々な代償機構があるのに、なぜ心不全では代償してくれていないのでしょうか?そんなに肺水腫が危ない疾患なら身体がそうならないようにもっと頑張っても良さそうな気はしますよね。

 

 

 

ただ、実際は頑張っていろいろな代償をしているわけですね。

 

 

ここで重要なのは心拍出量です。

 

 

 

 

心拍出量は、

 

 

心拍数×一回拍出量

 

 

 

で算出されますが、想像すれば容易ですが、これは、左心室から拍出される血液量に相当しますね。

 

 

心拍出量が減少すると

 

 

 

 

①交感神経系活性化

 

②レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系 (RAAS)亢進

 

③抗利尿ホルモン上昇

 

 

によって代償が働きます。

 

 

 

①心拍出量が急激に低下すると、血圧は低下します。これがシグナルとなり、頸動脈と大動脈弓にある圧受容体が低血圧シグナルを感知し、交感神経系を活性化します。

 

 

つまり、

 

 

 

a. 心拍数増加

 

b. 心収縮力増強

 

c. α受容体刺激による全身の静脈・細動脈での血管収縮

 

 

 

などが生じ、血圧が上昇します。

 

 

 

②次にRAAS活性化が生じます。

 

 

機序は軽くにしましょう。

 

 

 

心拍出量低下→糸球体ろ過量低下→ヘンレ係蹄上行脚の緻密斑でのClイオン濃度低下→Clイオン低下および交感神経活性によるβ2受容体刺激によって、傍糸球体細胞でレニン分泌→RAAS活性化→アンジオテンシンⅡによる血管収縮作用で血圧維持

 

 

 

 

さらに、口渇中枢活性化による飲水のほか、副腎皮質刺激によるアルドステロン分泌されることで循環血液量維持

 

 

 

 

されるわけですね。

 

 

あれ?じゃないですか?体液過剰になる疾患なのにより循環血液量維持する代償が働くわけですからね。

 

 

 

 

③抗利尿ホルモンはバソプレシンですね。これは尿を出さなくするので、循環血液量維持に働きます。

 

 

 

これらの代償機構は、最初はすごく有用に働いているのは間違いないですが、時間経過とともに(心不全が進行すればするほど)体液量増加が悪影響を及ぼしていくことは明白ですね。

 

 

 

これが心拍出量低下した時の代償機構ですが、この心拍出量は左室からの血液量でしたね。

 

 

つまり、

 

 

 

動脈側を反映するということです。

 

 

 

 

言い換えれば、心拍出量は有効循環血液量とも言い換えることができるわけですね。

 

 

循環血液量=動脈側の血液+静脈側の血液

 

 

なので、圧受容体である頸動脈と大動脈弓は、動脈側の循環血液量(有効循環血液量)の減少を感知しているわけです。

 

少し複雑ですが、ここを理解すると循環管理が上手になります!

 

 

 

次回は少し静脈の話をして、PVループから循環管理に関して深堀していこうと思います。

 

それじゃ、また!