2020.04.28

第22回 急激に血圧を上昇させた場合どうなる?②(獣医麻酔集中治療)

PV loopを決定する因子については、前負荷、後負荷、収縮能、拡張能です。

それぞれチェックしていきましょう!

 

 

①拡張能

 

 

 

拡張能を示す曲線のことをEDPVRと呼びます。たとえば猫の肥大型心筋症や左室肥大などではEDPVRは上方変移します。

 

 

 

②前負荷

 

 

 

輸液すると赤から黄色に移動するので、LVEDV(左室容量)は増加し、それに伴いLVEDP(左室拡張末期圧)が決定する。

 

少しだけ脱線してもよいでしょうか?笑

 

 

たとえば、肥大型心筋症動物の場合、拡張能が低下するので、EDPVRは上方変移していますよね。つまり、それだけでEDP(左室拡張末期圧)は上昇しているわけですよね。この状態で左室末期容積を増やしてしまう(例えば輸液)と、さらなるEDPの増加となります。こうなると後は想像の通りですが、肺静水圧上昇による肺水腫になるわけですね。このことをストレイン依存性拡張障害といいます。つまり、左心室に流入する血液量が増加することで徐々に左室が引き延ばされ、EDPが上昇することのことを言います。

 

 

一方で、肥大型心筋症では単純な拡張障害もあるわけですね。こうなると勝手にEDPは上昇します。このことをストレイン非依存性拡張障害と言っています。

 

混乱しちゃいますが、要は、肥大型心筋症はストレイン非依存性拡張障害で、そこに輸液(前負荷)することでストレイン依存性の拡張障害も合併するので、あっという間に肺水腫などに進行してしまうということですね。

 

 

 

 

昨年、ICU管理した肥大型心筋症の猫で、左房拡大が著しく、重度の肺水腫のため、気管挿管し人工呼吸管理した症例がいましたが、私としては、左心室拡大が著しかったので、ストレイン依存性の拡張障害からの肺水腫がメインであって、このためラシックスで水分を減らしてあげれば、状態は安定すると予想していました。

 

 

予想通りラシックスによって多量の尿産生を得られ、無事に抜管できると思ったのですが、翌日は心拍が少し上昇し、尿量が激減しました。変だなと思って、エコー検査すると左室はほぼペチャンコなのですが、左房拡大と拡張障害を認め、肺水腫は一切改善しない症例を経験しました。つまり、ストレイン非依存性拡張障害がメイン病態であって、治療が奏功しなかったということと考察していました。

 

 

虚血などによるストレイン非依存性拡張障害であれば、改善しますが、この疾患は不可逆的でしたね。

 

単なる「水引」で済まない症例はいつも対応に悩みます。循環器科のコンサルがいつも必要だなと感じます。

 

こういった症例のためにも、循環器ICUを得意とする人と一緒に働いてみたいですね!

 

 

 

余談だけで長くなりすぎました・・・

 

 

 

③収縮能

 

 

 

 

ESPVRと表現されます。収縮力が増強すると赤線のように移動します。そしてこのESPVRの傾きをEesと表現し、収縮末期エラスタンすといいます。

 

 

 

 

④後負荷

 

 

 

Eaを実効動脈エラスタンスといい、後負荷の真の指標とも言えます。後負荷が増大すると赤線のように移動します。

 

 

 

ここまで来て、はじめてPV loopが完成します!

 

 

 

 

 

 

EDVとESVの差が一回拍出量(SV)となります。

 

 

 

次回は少し疾患別に考えて、理解を深めていきます。

 

 

 

それじゃ、また!

 

 

参考文献:ICU輸液力の法則 中外医学社