2020.04.28

第23回 急激に血圧を上昇させた場合どうなる?③(獣医麻酔集中治療)

拡張能、前負荷、収縮能、後負荷が変化したときの、PV loopの変化を見ていきましょう!

 

 

 

図は拡張能が低下したときのPV loopですがEDPVRが上方変移するのでしたね。こうなるとEDPが上昇してしまい、青色のPV loopとなり、輸液の許容できる量が低下します。いわゆる肥大型心筋症の動物です。

 

 

 

 

 

 

次の図は収縮能が下がった場合ですが、ESPVRが下方変移します。これによって、PV loopは図のように小さくなります。

 

 

 

 

 

 

 

さて、次ですね。図は後負荷が上昇した場合を示していますが、オレンジ色のPV loopがそれです。単純な後負荷増大は小さいPV loopとなり、なおかつSVも低下しています。これはSV=(前負荷×心収縮力)/後負荷で示した通りですね。

 

 

これが血管収縮薬は後負荷増大による一回拍出量低下が危ないぞ!と言われる所以ですね。ただ、実際には血管収縮薬を使用した場合は、オレンジ色のPV loopになるよりはむしろ、赤のPV loopへと変化します。

 

 

なぜかというと、静脈血管収縮による前負荷増大が代償として入るからです。難しいですね。

 

 

受験勉強みたいに一問一答でなんとかなれば、もっと生体を理解しやすいのですけどね・・・だからこそ、やりがいがありますね。

 

 

 

 

 

 

では、心不全や心臓の収縮が低下している動物に血管収縮薬を使用した場合はどうなるでしょうか?

 

 

 

 

ESPVRが低下するのでオレンジ色のPV loopに変化します。ここに血管収縮薬を使用していくので青色のPV loopに変化していきます。

 

 

正常な症例に血管収縮薬を使用したよりも大幅に一回拍出量が低下します。しかし、このような状態でも前負荷の代償は入るのですが、思ったほどのSVを代償することはできません。

 

 

 

つまり、不全心では代償が働きにくいことがわかります。いわゆる後負荷不適合といわれる病態ですね。

 

 

参考文献:ICU輸液力の法則 中外医学社