2020.04.29

第25回 輸液の選択について②(獣医麻酔集中治療)

輸液製剤を語るうえで、どうしても欠かせないものにブドウ糖があります。

まずはこちらをご覧ください!

 

 

 

インターズー様 輸液特集より引用改変いたしました

 

 

 

これは、成分によって分布できる場所が違いますよ、ということを示した図です。

 

 

 

つまり、

 

 

 

 

蛋白質に相当するのは、アルブミン製剤だったり、膠質液(ボルベン、サリンヘス、ヘスパンダーなど)です。

これらは血管壁を通過できないので、理論的には血管内にとどまるはずです。

 

 

 

 

 

では、次に

 

 

電解質です。これに相当するのは、生理食塩水やリンゲル、1号液、3号液などのいわゆるNaをもつ輸液製剤です。

 

 

ナトリウムは細胞膜を通過できませんでしたね。したがって、細胞外だけに分布します。ナトリウムの話ですよ?誤解しないでくださいね。ナトリウムは細胞外にしか分布しないということです。

 

 

 

 

では、最後は

 

水分です。これに相当するのはいわゆるブドウ糖なのです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図に示したように、ブドウ糖はインスリンによって分解され、水に変化します。そうすると一定の割合で細胞内にも分布しています。

 

 

 

ではでは、5%糖加酢酸リンゲル液を投与してみましょう!

 

 

 

 

 

 

血管内に投与すると、まず5%ブドウ糖がインスリンによって分解され、一定量が水(黄色)に変わりますね。基材は酢酸リンゲル液なので、細胞外にはNa131mEq/LのNaと水分が残ります。

 

 

 

細胞内のKが145mEq/Lだった場合(これは血液検査してNaが145mEq/Lだった場合を想定:平衡のはずだから)、細胞内外ではほんの少しだけ濃度差が生じますね。なので145-131=14mEq/Lくらいの力で産生された水(黄色)分が細胞内に引き込まれます。したがって、ほとんどの5%糖加酢酸リンゲル液は細胞外液に分布するわけですね。5%ブドウ糖が入っていてもあまり細胞内には入りません。

 

では、最後に1号液でイメージを定着させちゃいましょう!

 

 

 

 

血管内に投与すると、まず2.5%ブドウ糖がインスリンによって分解され、一定量が水(黄色)に変わりますね。基材のNaは低張であり、細胞外にはNa90mEq/LのNaと水分が残ります。

 

 

細胞内のKが145mEq/Lだった場合(これは血液検査してNaが145mEq/Lだった場合を想定:平衡のはずだから)、細胞内外では大きな濃度差が生じますね。なので145-90=55mEq/Lくらいの力で産生された水(黄色)分が細胞内に引き込まれます。したがって、5%糖加酢酸リンゲル液などと比べると圧倒的に細胞内にも水分が移動するというわけですね。

 

それでもNa90mEq/Lあるので、それなりに細胞外にも残りますけどね!

 

 

 

ちょっと複雑かもしれませんが、この浸透圧をもとに水の移動を考えると輸液のレベルがちょっとずつアップしますので一緒に頑張りましょうね!

 

 

 

それじゃ、また!