2020.04.30
第26回 Stage CのMMVD麻酔①(獣医麻酔)
ここから少しMMVD罹患犬にどのような麻酔疼痛管理をしていくか、また、術後に注意する点など含めて解説していこうと思います。
よく質問受ける心疾患麻酔ですが、悩みは、
①どの鎮痛薬が良いのか?
②血圧管理はどうするか?
③輸液量は?
④不整脈は?
⑤肺水腫になったら?
⑥麻酔かけれるかけれないの判断?
これを全部話したら、大変ですね笑
詳細は動画配信でお伝えしますが、ここでは最低限必要な知識を書いておきます。
この最低限の知識(教科書で記載している程度)をセミナーでお金出すほど無駄なものはないですからね!
この辺は無料で自主学習で十分です。
オピオイド
〇モルヒネ
μ受容体作動薬
嘔吐があるが、鎮静は強い
筋肉内投与で4~6時間
ヒスタミン遊離作用があるため、静脈内投与は非推奨
ただ持続点滴は大丈夫(0.1mg/kg/時間とか)
〇フェンタニル
μ受容体作動薬
モルヒネの80-100倍の効果
持続時間は短い(20-30分:教科書上)なのでその後持続点滴(5-20㎍/kg/時間)
鎮静は弱いが嘔吐はほとんどない
〇ブトルファノール
μ受容体拮抗κ作動薬
他のオピオイドとの併用はダメ(拮抗しちゃう)
他の鎮静薬(ミダゾラムとか)との相乗効果あり
軽度から中等度の疼痛管理
鎮静効果は強い
その効果は45-90分(教科書上)
嘔吐抑制
0.8mg/kg以上では天井効果(鎮静鎮痛の上限)
〇ブプレノルフィン
μ受容体部分作動薬
μ受容体との親和性強いので、ほかのオピオイドの作用とぶつかってしまう
ただブプレノルフィンがμ受容体を完全に活性化させることはない
0.04mg/kg以上で天井効果(教科書上)
徐脈や嘔吐はまれ
鎮静効果は比較的弱い
〇レミフェンタニル
μ受容体作動薬
モルヒネの40-50倍の効果
持続時間は短い(5分)なのでその後持続点滴(20-40㎍/kg/時間)
鎮静は弱いが嘔吐はほとんどない
全身の非特異的エステラーゼで分解される
効果は急上昇し、終了すると急降下する
主に手術中で使用
〇フェノチアジン系
アセプロマジン
0.01-0.05mg/kg
強い鎮静
α1遮断による低血圧
中等度から重度の心疾患では避けるのが賢明(教科書上)
低血圧の代償性心拍上昇がある
抗コリン作動薬
〇アトロピン
0.01-0.05mg/kg 詳細はブログ第5回参照
心拍数増加させる
オンセットは1~2分
作用時間は20-30分
頻脈になりやすい
ベンゾジアゼピン系
〇ミダゾラム
0.1-0.3mg/kg
心臓に与える影響は少ないので使用しやすい
が、使用するメリットもあまりない
犬猫で鎮静効果はない
むしろ不安、興奮、運動失調、攻撃性増加などの問題も生じる
プロポフォールやアルファキサロンと併用すると導入量を減らせる
しかし、呼吸抑制が強くなる+循環は単独と比較しても差はない
つまり、使う意味はほとんどない
α2作動薬
〇メデトミジン
心疾患動物には通常使用されない(教科書上)
全身血管抵抗増加に伴う血圧上昇のため
徐脈→テザリングによって逆流量増加
鎮静量では心拍出量50-60%減少
メデトミジン20㎍/kgで心拍出量60%低下
デクスメデトミジン5㎍/kg以上で心拍出量60%以上低下
心拍出量が減少することは悪いことのように聞こえるが、大切なのは酸素需給バランスなので、正常より低下しても酸素消費がさがっているならあまり気にすることはない。何が悪くて良いという結論付ける論争が早くなくなればよいと思います(石塚の個人的な話)
導入薬
〇プロポフォール
6-10mg/kg
使いやすい
導入覚醒良い
容量依存性血管拡張
心収縮力抑制
投与の仕方には注意が必要
〇ケタミン
導入:5-10mg/kg
持続点滴: 0.5-1mg/kg/時間
交感神経刺激による心拍数、心拍出量増加
心筋酸素要求量増加も指摘されている
教科書上は心疾患や全身状態が悪い動物では避けられる傾向
私は普通に使います
一般的に使用する薬剤を記載しました。