2020.05.08
第36回 関係ないと思ってる人にこそ!中心静脈圧を知っておこう!獣医麻酔集中治療でも使える!
中心静脈圧(CVP)は輸液の指標として古くから使用されてきたパラメーターのひとつです。
静的指標とされていて、CVPとPAWP(肺動脈楔入圧)は輸液負荷の指標になっていたわけです。
しかし、
輸液反応性の指標としてはあまり有用ではなく、カットオフ値を色々調整しても感度、特異度は高くなく、輸液反応性の指標としては有効性は低い
とされています。
上の図は、敗血症患者でのCVPと輸液の関係を明らかにした研究(Reddi B, et al. 2018. Intensive Care Med. 44:1591-2)です。
図は引用改変させていただきました。
ΔCVPと輸液量は正規分布していて、ΔMAPをみても平均血圧とCVPの間には関連がないことが証明されています。
これは人のデータですが、犬猫で異なる可能性は低いと感じます。
では、CVPは使えないのか?決してそんなことはないのです。私は結構使いますよ。
輸液ポートとしてがメインですが、計測することもあります。
輸液反応性ではメリットは少ないので、使いどころは、
静脈還流量と心機能評価
です。
心不全の進行に伴いCVPは増加しますし、仮に心不全がなかった症例でもCVPが13とか15mmHgとかになっていたら、輸液どうしようと悩みますよね。むしろ、何か原因を考えます。
右心?左心?肺高血圧?などなどです。
例えば輸液してCVPが上昇してきたら、輸液が満たされたと考えるのではなく、CVPが上昇したら右心が処理しきれずに静脈還流量が低下し始めてる。
と考えます。
右心房圧を下げるにはどうしたら?忘れた人は前のブログチェックしてくださいね。
心拍出量を増加させる処置が必要になりますね。
高すぎるCVPは静脈還流量に影響するだけでなく、臓器障害にもつながるとされています。
下図をご覧ください。
Damman K, et al. Journal of American College of Cardiology 53: 582-588.2009.
腎静脈は後大静脈に流入するので、CVPの上昇により腎静脈はうっ血します。
これが腎うっ血となり、腎静脈上昇が尿量を低下させます。
そして、この2009年の論文では、中心静脈圧とGFR(糸球体ろ過量)が相関することが示されています。
こう考えると、CVPは意外とたくさんの情報を教えてくれますよね。
動物の場合、手技も簡単なのでぜひトライしてみてください。ただし、個人的には猫は少し難しいです。