2020.05.09
第37回 獣医麻酔の難敵!右心不全に挑む!!
私が獣医麻酔集中治療の中で最も難しいと感じる循環管理のひとつ、
「右心不全」
について自分が麻酔するつもりで解説します。
右心不全になっている原因によって麻酔管理は異なるが、まずは私が獣医麻酔集中治療で経験した疾患を以下に示します。
<原因>
左心系の弁膜症(僧帽弁)
拡張型心筋症
不整脈源性右室心筋症
三尖弁逆流
心房中隔欠損
肺血栓塞栓症
肺高血圧症
重症呼吸不全による低酸素性肺血管収縮
<右心不全における症状や合併症>
静脈圧上昇
右室機能障害
低心拍出
この結果、
肝うっ血
門脈高血圧
腸管浮腫
肝腎症候群
腎障害
が生じます
では、実際に右心不全に麻酔をしていきましょう
注意点は
①循環血液量の増加が主体で、右心機能が比較的保たれているタイプ
なのか
②右心機能が低下し、心拍出量低下が主体のタイプ
なのかを見極めることです
なぜなら、①の場合は、利尿剤で改善がある程度できますが、②であれば、利尿剤によって病態が悪化しますよね?
そりゃ、循環血液量が減ってしまえば、当然のごとく低拍出量を悪化させ得るわけです
しかも、皆さん覚えていますか?ブログ第34回です。
右室は後負荷の影響を受けやすいんですよね?後負荷増大によって右室の一回拍出量は結構減るわけです
では、麻酔前に右室の収縮機能が評価する必要があるというわけですね。これが維持されていれば①、維持されていなければ②が想定されるので、麻酔方法が大幅に変わります
簡便に測定できる右室収縮機能の指標としては、
三尖弁輪移動距離(TAPSE)
収縮期三尖弁輪移動速度(S')
が用いられている
ちょっと研究してみたいことがあるので、それはまたどこかで報告します
ここまで見てもらえばわかっていただけたと思いますが、
めちゃ難しいのです
ポイントは、
右心後負荷の軽減
右室収縮力の増強
右室前負荷
のコントロールが重要となります
①だったら、まずは利尿剤も投与します
前負荷が十分で②であれば、収縮力を上げていきます
ここで使用するのがドブタミンです
気を付けなくてはならないのが、心エコー上では左室に異常がなくても、左室-右室の間に
ventricular interaction
ventricular interdependence
septal bowing(心室中隔の形態異常)による左室の物理的狭窄
が生じている
なので、一応、潜在的な左室一回拍出量の低下を想定して、ドブタミンを選択する
ドブタミンはドパミンに比較すると肺動脈圧上昇に寄与しない可能性があるが、犬では結構上がる
そのため、私の場合は、処方薬の中にピモベンダンがあれば、手術当日も服用させる
むしろドブタミンよりも適切な薬剤であると思う
したがって、ピモベンダンありきで、術中はドブタミンを併用する。具体的な投与量は3㎍/kg/minから。
ここからは、無料ではもったいないので、やめます笑