2020.04.20

第3回 もう一回フェンタニルとレミフェンタニルについて勉強してみた(獣医麻酔)

フェンタニルは、

肝代謝CYP3Aで分解、代謝産物は腎臓排泄。脂溶性薬物で血液脳関門(BBB)を通過して効果を発揮

 

最高血中濃度と臨床的な効果の間には時間差があるようだ(人では6.8分)

 

単回投与では筋肉や脂肪に再分布するので効果は短い。臨床的な感覚は30分くらいだったけど、当たり前ですが、個体差はある。

 

持続点滴すれば、そのうち筋肉と脂肪に蓄積される。これら組織が飽和となれば理論的には作用は血中半減期に依存する。

 

3コンパートメントモデルで考えれば、コンパートメント3の分布容量が大きいため、蓄積性は高いし、クリアランスもそんなに高くない。

 

 

レミフェンタニルは、

水溶性で、全身の非特異的エラスターゼによって加水分解。だから腎臓、肝臓は関与しない。

 

代謝産物に薬理学的効果はない。

 

フェンタニルと違って、時間差はなく、effect-site equilibration time: 1.1分くらいらしい。

 

蓄積性なく、血中濃度は急上昇急降下である。

 

 

じゃあ、実際にどう使うか・・・

動物では血中濃度を予測ができない。今のところ。動物ではどのくらいの血中濃度で鎮痛が発現したり、呼吸抑制がでたりするのでしょうか?最近論文調べてないのでよくわかりませんが、人の場合は、1 ng/ml以上で鎮痛効果発現。7 ng/ml以上で天井効果。

 

フェンタニルは時間差を考慮して、ある程度の予測が必要で、痛がってから、あるいは動きそうというところからフェンタニル投与では遅い。したがって、本来は麻酔科医がしっかり見ている現場で使用すべきだと思ってはいる。例えば10㎍/kg/hrで持続しても濃度が上昇するまでにはある程度の時間がかかる。

 

そのため、

 

犬であればフェンタニル5㎍/kg iv後に、10㎍/kg/hrで持続点滴するなどの工夫が必要である。いわゆる負荷容量。

 

猫であればフェンタニル1㎍/kg iv後、5㎍/kg/hrが一般的。

 

頭の中で血中濃度をイメージしなくてはならない。

 

レミフェンタニルは、この負荷容量が必要ない。人では30-60㎍/kg/hrで外科手術の反応を強く抑制するとされている。

 

犬では36㎍/kg/hrでイソフルランのMACを50%減少できるとされている。臨床的な使用速度は20-40㎍/kg/hrで使用している。

 

注意点としては、あまりに高用量のオピオイドを投与すると急性耐性やOIH(Opioid induced hyperalgesia)を引き起こす。

 

したがって、最近はオピオイドに頼りすぎずに局所麻酔などを併用するなどの工夫が必要である。

 

フェンタニルは静脈内の他に、筋肉内、硬膜外腔にも投与可能。レミフェンタニルはグリシンがあるからダメ。グリシンは神経毒性。

 

 

その他注意点としては?

徐脈、呼吸抑制、骨格筋硬直、低体温を伴わないシバリング

 

プロポフォールやミダゾラムなどと併用すると相乗効果によって低血圧や無呼吸が生じやすくなる