2020.05.14

第43回 獣医麻酔:甲状腺機能低下症の麻酔管理③

<術中の体温低下や低換気、低血圧に対しての対応>

低体温に対して

 

麻酔導入前、つまり低体温になる前から積極的な加温が大切である。

いわゆるプレウォーミングは低体温の予防として有用である(Read MR, et al.2012. Proceeding of the 11th World Congress of Veterinary Anaesthesiology, Sept 23-27, Cape town: South Africa.)。

術中は循環温水マットやベアハガーのような対流式加温装置を用いて対応すべきである。

また、湯たんぽを用いて心臓を中心に胸郭にあてがったり、頸部の血管にあてがってもよい。

 

低換気に対して

 

低酸素や低換気に対する換気応答が低下しているだけでなく、甲状腺機能低下症では体重増加などの影響によって機能的残気量が低下している。

さらに麻酔薬の影響によってさらなる換気抑制が生じてくる。

したがって、補助換気が必要になることが多い。

 

 

補助換気は施設にある人工呼吸器によって設定は変わるが、プレッシャーコントロールがあればアシストする形でも良いし、従圧式や従量式を用いてアシストすることで換気調節が可能である。

完全に自発呼吸を停止させ、コントロールで人工呼吸設定する場合は、一般的な呼吸設定で問題ない。

人工呼吸設定は以下を参考にしていただきたい。

↓↓↓↓獣医療関係者のみ閲覧可能(password:free)



 

 

 

低血圧を認めた場合は、カテコラミン反応性が悪いといえども、カテコラミンに頼らざるを得ないことが多い。獣医療で使用されるカテコラミンはドパミン(3~10㎍/kg/min)もしくはドブタミン(1~10㎍/kg/min)、ノルアドレナリン(0.05~2㎍/kg/min)などが使用される。これを土台として、循環血液量が減少しているようであれば輸液投与する。この場合、晶質液、膠質液どちらでもよい。膠質液にはデメリットも存在するため、その適応には注意が必要である。

これでも低血圧が改善しない場合は、眼瞼反射、眼球の位置、顎緊張を丁寧に確認し、吸入麻酔薬の濃度を調節していく。