2020.05.14

第44回 獣医麻酔:甲状腺機能低下症の麻酔管理④

non-thyroidal illness syndrome

での麻酔をどう考えるか?

 

聞きなれない言葉かもしれませんね。獣医療では

 

 

euthyroid-sick syndrome

 

 

と呼ばれていますね。もちろん正しいです。

non-thyroidal illness syndrome(NTIS)は同義です。

 

 

要は、甲状腺疾患ではないのにも関わらず甲状腺ホルモンが低値を示す疾患です。

 

悩ましいのは、このNTISが本当に甲状腺機能が低下しているか定かではないからです。

 

今まで話した甲状腺機能低下症と同じ考えで麻酔集中治療すべきか難しいのです。

 

詳しい機序はわかりませんが、詳細はVESコミュニティーでお話します。

 

 

 

この疾患は様々な疾患に付随して出てくるので、私も臨床的意義は全く分かりません。

 

このNTISに対して甲状腺ホルモンを補充する治療をする群としない群で生存率を比較した研究が存在しており、

 

 

 

結果は有意差なし

 

 

 

となっています。

 

したがって、生存率だけで評価するならばNTISに対しての治療は必要なしとなります。

 

 

ここから先は研究が必要ですが、

 

NTISと診断した犬で、T4製剤投与群と非投与群で麻酔中の血圧変動や低体温発生率などを明らかにできれば、少なくとも犬における麻酔管理には必要、とできるかもしれませんが、現在のところ不明ですね。

 

 

 

おそらく、NTISと診断されないまま、麻酔している症例もたくさんいます。

 

 

おそらくそれだけ臨床症状がないのでしょうね。

 

 

すなわち、現在のところ、NTIS症例に麻酔する場合には、特に気にすることはなく、普段通りに麻酔することが重要です。