2020.05.14

第46回 獣医麻酔集中治療で遭遇する粘液水腫

粘液水腫は、そんなに頻度は多くないですが、実は隠れていたりして、厄介になることがあります。

 

 

 

「甲状腺機能低下症が重篤となり、意識障害、低体温、臓器不全を引き起こした状態」

 

 

 

のことを粘液水腫と言っています。

 

状態としては、

 

 

意識障害

低体温

心拍数が低め

 

 

 

がキーワードですが、

 

ここに敗血症や血液分布異常性ショックを合併すれば心拍数はわりと普通であることもあります。

 

 

 

ここでいう臓器不全とは何か?

 

 

 

中枢神経→意識障害

消化器→消化管蠕動低下、イレウスなど

循環器→心拍数、心電図異常、心嚢水、胸水、肺水腫、低血圧

代謝→低ナトリウム血症、低血糖、低酸素血症、高炭酸ガス血症

 

 

 

 

などが臓器不全とされています。

 

検査の甲状腺ホルモンの数値は重症度と相関はしないので、数値だけでは粘液水腫を診断できません。

 

 

 

そして、この粘液水腫は誘発されるのです。以下のものによって!

 

 

低体温

敗血症

心不全

手術

薬剤

消化管出血

 

 

 

がその誘因とされています。

 

 

術後に発覚するのですが、

 

 

特に問題となるのは、呼吸器と循環器です。

 

呼吸筋力の低下に加え、換気応答の低下しています。気づいたら高炭酸ガス血症、低酸素血症ってこともあるので注意です。

さらにむくむので、気道閉塞し、挿管必要になる症例もいるようです。私は経験ありません。

 

循環器ではβ受容体のダウンレギュレーションなどにより、心拍数低下と心収縮力低下が著しいものとなります。