2020.05.15
第49回 獣医麻酔集中治療:猫の血圧管理について考察
猫の血圧管理は個人的にはとても難しいと感じます。
たとえばイソフルランにしても、猫のMACは実は犬よりも高いんですよね。
犬が1.4%に対して猫は1.8%くらい必要です。
MAC実験すると、確かに猫は痛み刺激に対して体動が出やすい印象があります。
が、眼瞼反射や眼球位置はがっつり麻酔かかった状態で、血圧は下がりやすいのですが、動く。
という、なんとも悩ましい状態になりやすいと私は感じています。
ただ、CT検査やMRI検査などで、痛みを伴わない麻酔のときは
イソフルラン0.7~0.8%程度
で眼瞼反射なく、眼球位置も下がっている症例がほとんどなんです。
個人的にはイソフルランは少なめにして、ほかの薬剤で鎮静をカバーしながら、鎮痛できれば猫にとっては一番良いのでは?と考えています。
猫ではあまり昇圧剤などの研究がされていないので、何を使用すべきかは本当に難しいです。
犬で一般的に使用されるドパミン、ノルアドレナリン、ドブタミン、エフェドリンなどは猫では心拍数を結構上昇させます。
したがって、
徐脈性低血圧
にはこれらカテコラミンは有用です。
第一選択はエフェドリンです。私は50㎍/kgからスタートしてます。
問題は血管拡張性低血圧で頻脈のときが悩ましいです。
本来ならノルアドレナリンはこの場合、一番良いのですが、猫では心拍さらに上げてしまいますからね。
ドパミンも同様です。
そうなるともうカテコラミンは使えないんですよね。
唯一心拍に影響しないのがフェニレフリンですが、敗血症でのショックで血液分布異常性ショックの場合、まぁ効果ないですね。
フェニレフリンはα選択性高く血管収縮作用も強いですが、重症例では良い効果はほとんどありません。
これは犬でも同様です。
したがって、猫では輸液負荷したにもかかわらず、低血圧離脱できない、ノルアドレナリンも効果ない場合(個人的には使わなくてもよいかと考えています、猫の場合)、バソプレシンを使用します。
私の場合、輸液投与後も頻脈性低血圧で、血管拡張が疑われる場合は、バソプレシンを投与します。
少し論文を探ってみました。
猫で症例報告がありました。むしろ検索に引っかかってくるのがこれだけって・・・研究したいですね。
JFMS Open Rep. 2019 Jun 18;5(1):2055116919855539. doi: 10.1177/2055116919855539. eCollection 2019 Jan-Jun.
Suspected symmetrical peripheral gangrene in a cat.
輸液、ノルアド、ドパミン、バソプレシン、ヒドロコルチゾンで対応しましたという報告です。
VESコミュニティで詳細話します。LINE公式アカウント内でも報告しますね。