2020.05.16
第50回 獣医麻酔集中治療:治療抵抗性低血圧とどう戦うか?
このような質問をいただきました。
【胆嚢破裂、腸捻転など重症度の高いオペ後に消化管内への液体貯留、腹水などが認められた際の管理について、血圧が維持されず、ドパミン7.5~10㎍/kg/minでなんとかMAP50mmHg程度のとき、エコー評価しながら輸液を増量していくが、なかなか血圧維持できずに、時間経過とともに血圧は低下してしまう。このような場合、輸液量増やすのか、四肢末梢やCRTを見ながらフェニレフリンのような血管収縮薬を使用するのが良いのか】
というご質問をいただきました。
普段は個人的質問は受け付けていないのですが(契約病院様がいるのですいません)、なかなか大切な質問だったので、ブログにしてしまおうという狙いです。
まず、消化管に液体貯留や輸液による腹水が出ている時点でだいぶひどい炎症で、予後はあまりよくない気がします。
このような段階でも
心拍数
血圧
四肢末端温度
CRT
エコーによる心内腔評価
を行い、必要に応じて輸液が必要になります。
おそらくご質問いただいた先生の症例のフェーズは①もしくは②である可能性が高いです。
つまり積極的な輸液療法が必要になります。
しかし、ある程度輸液も入れているし、でもあまり効率よく輸液が効果を発揮していない、
という悩みですよね。
解決策としては、
血管収縮薬を併用するのもひとつです。
効率よく輸液による昇圧を得るには、
Pmsfとは静脈圧に近いですが、同じ輸液量を投与するにしても血管収縮薬で血管抵抗を高めたほうが静脈圧の上昇を効率よく得られるのです。
結果として
静脈還流量、心拍出量、血圧を上昇させやすいです。たくさん入れても効果がないなら、少ない量で最大限の効果を得る作戦です。
少し複雑なのですが、血管収縮薬使用すると静水圧が高くなる可能性もあるので、状況によっては血管外にさらに漏れ出す可能性もあるので注意が必要ですが、多くはバイタルが安定します。
では、なんの昇圧剤を使用するかですね。
先生のご提案されたフェニレフリンはほとんど効果をは発揮しないので、このような重症例では使用しないことが多いです。使っても良いですが、効果を実感することはまずないです。
ドパミンも使用しても良いですが、高用量にすると不整脈や高血糖、カリウム異常などの問題が生じます。
したがって、
ノルアドレナリンが第一選択となります。
これでも昇圧が得られないなら、バソプレシンを使用します。
投与量や投与方法はSA Medicine 輸液特集を参考にしてください。
輸液効率を上げたいなら、心収縮力を増加させるのも手段となります。つまりドブタミンです。
ここまでやっても間質に液体がどんどん漏れ出るのであれば、FFPやアルブミン製剤を投与していきます。もちろん貧血が進行するようであれば輸血も考慮です。
この辺の詳細はVESコミュニティでも話してますので、ぜひのぞきに来てくださいね。