2020.05.20
第57回 獣医麻酔集中治療:腎臓を丸裸にしていみる①
腎臓の水電解質バランス機構
腎臓は想像以上に難しい。
ここ最近、心臓・腎臓についてそのメカニズムを解析しているが、これまた興味深い。
腎臓生理学シリーズとして、果てしなくなるかもしれないが、ブログでアウトプットし続けます。
糸球体と糸球体濾過機序
体液や電解質調節のファーストステップは糸球体濾過から始まる。
この濾過の駆動圧となる限外濾過圧は、
①心拍出量と血圧維持
②糸球体毛細血管圧(静水圧)で決まる。
アルブミンなどの膠質浸透圧はこの限外濾過に対しては逆方向に動くので、
限外濾過圧は静水圧と膠質浸透圧の差である。イメージできましたか?
図の糸球体から下側に向かう力(静水圧)とそれとは逆の力(膠質浸透圧)のバランスということですね。
これが
GFR=糸球体ろ過量です。
ちなみにこの力が逆転して、ボーマン嚢内の濾液が糸球体毛細血管に逆流することはないとされている。
この静水圧は全身血圧とは独立した調節系を有しており、高血圧動物が慢性的にGFRが増加していることはない。
腎臓の自動調節能では、輸入細動脈が弛緩したり、輸出細動脈が収縮することでGFRは一定に保たれている。
しかし、カテコラミンや痛み刺激によるカテコラミンの作用によって、輸入細動脈と輸出細動脈は同時に収縮するので、思いのほかGFRは増加しない。それどころか、多量のカテコラミンによってはGFRが低下することも示唆されている。
たとえ、臓器の自動調節能の範囲内に血圧が維持されていても、過度な血管収縮薬の使用は臓器血流を低下させる可能性もある。
GFRの変動を尿細管が調節する
基本的には自動調節能の範囲内であれは、GFRは維持されるが、この濾過流の変動は近位尿細管で微調整される。
これを
糸球体尿細管バランス(GTバランス)
と言います。
つまり、GFRが増加すると近位尿細管での再吸収が促進され、体液量を調整し、GFRが減少すると近位尿細管での再吸収量を減少させて、体液量を同程度に調整することができる。
このほかに、GFRの低下を感知したマクラデンサが濾液のClの変動を感知し、この変動を最小限にするように
輸入細動脈と輸出細動脈にシグナルを送る。この調節系のことを
尿細管糸球体フィードバック( TGF機構)
と呼ぶ。
次回は尿細管それぞれの役割について解説していきます。