2020.07.22
第68回 麻酔集中治療医が考える膵炎③
【膵炎(炎症)が全身循環(マクロ)および微小循環(ミクロ)に及ぼす影響】
急性膵炎による微小循環の病態生理学的変化を示す。
Cuthbertson CM and Christophi C. Disturbances of the microcirculation in acute pancreatitis. British Journal of Surgery; 2006; 93: 518-530.より引用
通常、膵血流はホルモンや神経機構による自動調節能により調節されている。
膵灌流は外分泌と密接に関連しており、ソマトスタチン、セクレチンならびにコレシストキニンによって調節されている。
膵組織は虚血と密接に関連しており、膵炎は脱水やショックなどに起因するとされている。
この血管系と灌流の異常が膵虚血をもたらし、膵炎に発展する可能性を示唆する論文がいくつか存在している。
また、これら虚血が膵炎を誘発するとする実験的証拠も多数存在する。
血管収縮薬であるフェニレフリンを投与した研究では炎症が増幅することが示されている。
膵炎では血管系に影響を与え、血管透過性亢進による二次的な循環血液量減少を特徴とする。
結果として、臓器血流を減少させる。腎血流量の低下から腎不全や急性尿細管壊死などを引き起こす。
マクロ循環の変化としては、血液濃縮、頻脈や平均血圧、心拍出量および中心静脈圧の低下が一般的である。
面白いことに積極的な輸液療法により心機能や臓器灌流が回復したとしても、膵血流は独立した微小血管機能により異常のままであることがある。
つまり輸液療法により心拍出量を増加させても膵炎の重症度が高いほど膵血流は低下している可能性がある。