2020.09.06
第75回 循環管理に必要な基礎知識③
<症例②>
一般状態良好な猫、10歳齢
片側乳腺全摘出術を実施
血液検査所見:BUN34, Crea1.8であり、BCS2
術前血圧180/110(132)
痛みの程度:重度
予想される手術時間:90分
~麻酔プロトコール~
ブプレノルフィン0.02mg/kg IV
プロポフォール7mg/kgおよびメデトミジン5㎍/kg で導入した
(メデトミジンの投与タイミング間違えると嘔吐するため注意、詳細はVESオンラインサロン)
気管挿管後
酸素イソフルラン吸入麻酔
疼痛反応を認めた場合には、メデトミジン1㎍/kg ivする
麻酔導入後、
心拍数106bpm, 平均血圧95mmHgで維持した
毛刈り、消毒後イソフルランのダイアルを1%にした
切皮前の血圧は
100/68(75)であったが、慢性腎臓病と高血圧があったことから心拍出量と血圧をさらに増加させた
①低血圧の原因は?
イソフルランによる血管拡張作用およびメデトミジンによる血管拡張作用
②手術の影響?
血行動態に及ぼす手術内容ではない。肥大型心筋症などの心疾患もない
③使用を考慮する昇圧剤
血管収縮作用を優先させたいが、メデトミジンによる心拍数低下と心拍出量低下が予想される
→心拍数増加:アトロピン、エフェドリン、ドパミンなど
→心拍出量増加:輸液、エフェドリン、ドパミンなど
同時に痛みを伴うのであればメデトミジン1㎍/kgを投与してもよいが、時間経過とともに血圧は下がる
この症例は、眼瞼反射(-)顎緊張(-)であったため、エフェドリン50㎍/kg ivし治療した